国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA、理事長:山川 宏)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長:徳田 英幸)は、欧州宇宙機関(ESA)と共同で開発し、2024年5月29日7時20分(日本標準時)に打ち上げられた雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(和名:はくりゅう)搭載雲プロファイリングレーダ(Cloud Profiling Radar)の初観測画像を取得しましたのでお知らせします。CPRは、W帯(94GHz)における世界初の衛星搭載ドップラーレーダで、JAXAとNICTが共同で開発を行いました。現在CPRの初期機能確認運用を実施しており、6月12日および13日に初観測を行いました。日本の東海上にある梅雨前線上の雲域を観測し、雲の内部を捉え、世界で初めて、宇宙から雲の上下の動きを測定することに成功しました。以下の画像は、レーダ観測によって得られた測定データを雲の断面として可視化したものです。
CPR初観測画像を取得するイメージを下記の特設サイトにて動画でもご覧いただけます。
2024年6月13日13時36分頃(日本時間)に、CPRは日本の東海上にある梅雨前線上の雲域を捉えました。CPRは上空約13kmに達する雲分布を捉え、また高度約5kmより下の高さでドップラー速度が下方向に大きくなる特徴が確認できました。これは雨滴の速い落下速度を示していると考えられます。このような観測は、従来観測地点の限られる地上レーダや航空機レーダでしか得られないものでしたが、衛星搭載のCPRから地球全体を均一に観測することができます。
CPRによる梅雨前線をはじめとしたさまざまな雲域における観測を通して、雲粒が降雨へ成長するメカニズムの解明に貢献することが期待できます。また、雲が気候システムに与える効果は、雲の高さや重なり方、雲の種類などにより大きく影響されるため、CPRにより雲の高さ方向の情報を雲の上下の動きも含めて世界規模で計測することで、雲が気候変動に与える影響の解明に貢献します。
今後も引き続きCPRの初期機能確認(約6カ月)を行った後、定常的な観測運用へ移行するとともに、データ提供をJAXA G-Portalならびに欧州宇宙機関(ESA)ウェブサイトから開始する予定です。EarthCARE衛星に搭載されている残り3つのセンサはESAが開発しており、ESAが初期機能確認を進めています。CPRとESAのセンサを複合した画像についても後日お知らせする予定です。
各機関の役割分担
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA):
搭載センサ(CPR)の開発、地上システムの開発・運用、データ提供 - 情報通信研究機構(NICT):
CPRの性能評価、CPRデータの地上処理アルゴリズム開発 - 欧州宇宙機関(ESA):
搭載3センサの開発、衛星システム及び地上システムの開発・運用、データ提供