ポイント
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映像視聴時に視覚由来、聴覚由来で感情が喚起された時に異なる活動をする脳部位を特定
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今後、ヒトの感動に関わる脳内過程がより解明される可能性
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「neuro-design(ニューロデザイン)」でヒトに優しい社会づくりへの貢献に期待
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet)において、パナソニック株式会社エレクトリックワークス社及び同志社大学の研究者らと、fMRIを使った心理実験によって、映像視聴時に視覚由来、聴覚由来で感情が喚起された時に異なる活動をする脳部位を特定しました。本発見、本技術の研究開発により、今後、ヒトの感動(move)に関わる脳内過程の解明が促進されるとともに、ヒトの感動を喚起するモノやサービスの研究開発にも役立てられることが期待されます。さらに、本研究結果より、脳からデザインする「neuro-design(ニューロデザイン)」の観点から、ヒトに寄り添うモノづくりやサービス、ヒトに優しい社会づくりにも貢献できることが期待されています。
なお、本成果は、2024年9月12日(木)に、英国科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
背景
ヒトは見る、聞く、嗅ぐなどのいわゆる五感を通して、外界の情報を処理していますが、感情を喚起された時に活動する脳部位や脳情報の処理過程はいまだ分かっていないことが多いのが現状です。その主な理由として、多くの場合、何かを感じて喚起される感情は、見る、聞くなどの複合的な知覚や感覚がもたらした結果と考えられ、その脳部位の特定や脳内過程を調べることには難しさがあり、映像によって喚起される感情そのものを科学的な研究対象とすること自体が大きな困難を伴う課題とされていました。
今回の成果
今回NICTは、心理実験やfMRI実験を行い、映像(視聴覚刺激)を見て喚起される感情に関わる脳部位を特定することに成功しました。
実験では、実験参加者(男6名、女6名、計12名。平均年齢26.6歳)の脳活動をfMRIで計測しながら、一つ40秒間の映像(計24種類、自然や風景の映像のバックグランドで簡単なピアノ演奏(有名でない曲)が流れる動画)を視聴してもらいました(図1参照)。そして、それぞれの映像に対して、主に画像(視覚刺激)により感情が喚起される映像であったか、もしくは主に音楽(聴覚刺激)により感情が喚起される映像であったかを報告してもらい、それらに基づき、“画像により感情が喚起された(visual-driven)映像”と“音楽により感情が喚起された(auditory-driven)映像”とに分けて結果をまとめました。それらの結果と脳活動を分析した結果、脳の聴覚野(auditory area)と島(insula)(図2参照)の脳活動パターンが、感情の喚起が画像由来か音楽由来かを決めることに深く関わっていることが証明されました。今回の成果は、映像視聴時に起こる感情の喚起が映像由来か音楽由来かで活動が変化する脳部位を明らかにするとともに、感情喚起の脳内過程の理解を深めた研究として大変意義深いと思われます。
今後の展望
本研究によって、ヒトの複雑な感覚である感情の喚起に関わる脳部位や脳情報の処理過程の理解が深まったことは大変意義深いことです。今回の知見を活かし、今後は、「感動(move)」に関する研究の促進とともに、脳科学研究だけにとどまらず、脳情報からのデザインを考える「neuro-design(ニューロデザイン)」の観点から導き出されるようなモノやサービスづくり(つくられたモノやサービスに対する脳の反応を見るのではなく、脳の反応からモノやサービスづくりを行うなど)、そして、ヒトの心に寄り添う、ヒトに優しい社会づくりに関わる情報通信システムの構築などにも貢献できることが期待されています。
論文情報
論文名: Brain activities in the auditory area and insula represent stimuli evoking emotional response
掲載誌: Scientific Reports
著者: Yoshiaki Tsushima, Koharu Nakayama, Teruhisa Okuya, Hiroko Koiwa, Hiroshi Ando, Yoshiaki Watanabe
なお、今回実施したすべての実験は、NICTの倫理委員会の承認を得ており、実験参加者には実験内容を事前説明の上、参加への同意を取っています。