世界記録更新、標準外径の19コア光ファイバで毎秒1.02ペタビットの1,808 km伝送を達成
ポイント
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世界で初めて、標準外径の19コア光ファイバで、毎秒1.02ペタビットの1,808 km伝送に成功
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複数の波長帯で損失低減を実現した標準外径の19コア光ファイバと、その光ファイバに対応した光増幅中継機能を開発できたことで達成
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通信需要が高まる将来の光通信インフラの通信容量拡大と長距離化の両面で大きく貢献
背景

今回の成果
今後の展望
各機関の役割分担
- NICT: 伝送システムの設計・開発、伝送実験
- 住友電工: 結合型19コア光ファイバの設計・開発
採択論文
関連する過去のNICTの報道発表
- 2023年5月23日 「15モード光ファイバで毎秒273.6テラビット、1,001 km伝送実験成功」
https://www.nict.go.jp/press/2023/05/23-1.html - 2023年3月15日 「世界初の標準外径19コア光ファイバを開発し、伝送容量の世界記録を更新」
https://www.nict.go.jp/press/2023/03/15-1.html - 2021年6月21日 「世界記録更新、4コア光ファイバで毎秒319テラビット・3,001 km伝送達成」
https://www.nict.go.jp/press/2021/06/21-1.html
補足資料
1. 今回開発した伝送システムと光ファイバ伝送損失特性


2. 今回の実験結果

用語解説
標準外径光ファイバ

国際規格で、光ファイバのガラス(クラッド)の外径は0.125±0.0007 mm、被覆層の外径が0.235~0.265 mmと定められている。現在の光通信で広く使用されている光ファイバは、外径0.125 mmのシングルコア・シングルモード光ファイバで、数ワット程度の光入力パワー制限により、伝送容量に限界があるため、新型光ファイバの研究開発が盛んに行われている。
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ペタビット、テラビット 1ペタビットは1,000兆ビット、1テラビットは1兆ビット、1ギガビットは10億ビット。毎秒1.02ペタビットは、2024年11月時点の国内ブロードバンドトラヒックの約26倍のデータをファイバ1本で伝達できる容量である。 元の記事へ
伝送容量と距離の積 光ファイバ伝送の最大の利点は、光の波長領域の広さを活かし多くの波長を利用する大容量と、長距離伝送でも信号劣化が少ない搬送能力である。したがって、光伝送システムの伝送能力の一般的な指標として、容量や距離だけではなく、それらの積で表現したものが用いられることがある。単位はビット/秒・kmで表される。 元の記事へ
世界記録 2025年4月3日の国際会議発表時点で、標準外径光ファイバを用いた伝送実証における「伝送容量と距離の積」の世界記録を更新したものである(NICTによる調査)。 元の記事へ

マルチコア光ファイバ
現在、中・長距離通信用に普及している標準シングルコア・シングルモード光ファイバによる伝送(図3(a)参照)は、数ワット程度の光入力パワー制限により、伝送容量に限界がある。その問題を解決するために、コア(光の通り道)を増やしたマルチコア光ファイバを用いた伝送(図3(b)参照)や、マルチモード光ファイバの研究が進められてきた。マルチコア光ファイバでは、コア間が近接していると、あるコアから漏れた信号がほかのコアに侵入し、干渉して伝送品質が劣化する課題がある(図3(c)参照)。コア間の信号干渉を低減するために、コア間を適切に広げコア内に信号を閉じ込めた非結合型マルチコア光ファイバが一般的である。現在、早期実用化を目標として、標準外径の非結合型の2コアや4コア光ファイバの研究開発が活発に行われている。
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マルチモード光ファイバ伝送 光ファイバのコアの中を光信号が伝搬する時は、コアとクラッドの境界で全反射を繰り返しながら、様々な振動状態で進行する(図3(e)参照)。この振動状態の違いが伝搬モードである。マルチモード光ファイバはコア径が大きく、一つのコア内に複数のモードが存在する。マルチモード光ファイバの伝搬中や、入出力、接続時に、モード間での信号干渉が発生するため、MIMOデジタル信号処理による干渉の除去が必要となる。モードの異なる信号では、受信器に届くまでの時間差が生じるため、ファイバの最適化や負荷の大きいデジタル信号処理が必要である。これまでのマルチモード光ファイバ伝送では、最大で55モードを用いた伝送が実現されている。 元の記事へ
結合型マルチコア光ファイバ 結合型のマルチコア光ファイバ(図3(d)参照)は、コア間の信号干渉を受信器側のMIMOデジタル信号処理によって除去する前提で、コアを密に配置している。結合型マルチコア光ファイバを用いた伝送は、マルチモード光ファイバ伝送に比べ、各コアを伝搬する信号の伝搬特性は均一化されるので長距離伝送に適している。しかし、長距離伝送に必要となるコア間結合のランダムさを担保するためには、結合が強くも弱くもなり過ぎない様に適切にコア同士の間隔を取る必要があり、これまで報告された標準外径の結合型マルチコア光ファイバのコア数は最大で19コアである。 元の記事へ
MIMOデジタル信号処理 マルチモード光ファイバや結合型マルチコア光ファイバを用いた伝送では、モード分離(モード/コアごとの個別の信号チャネルへの分離)を行う際に、ほぼ必ずMIMO(Multi-input-multi-output)処理が必要となる。MIMOは、無線通信でマルチパス干渉を除去するために用いられる信号処理技術である。光通信においては、同一の光ファイバ内を伝搬する異なる光信号同士の干渉を除去するために使用される。 元の記事へ
波長帯域 長距離光通信用途で主として用いられている波長帯域はC帯(波長1,530~1,565 nm)とL帯(1,565~1,625 nm)で、その他にO帯(1,260~1,360 nm)、E帯(1,360~1,460 nm)、S帯(1,460~1,530 nm)、U帯(1,625~1,675 nm)がある。今回はC帯とL帯を使用した。 元の記事へ
16QAM QAMとは、光の位相と振幅を併用し複数のビットを表現する方式(多値変調)の一種である。16QAMは1シンボルが取り得る位相空間上の点が16個で、1シンボルで4ビットの情報(24=16通り)が伝送でき、同じ時間でOOK(On-Off Keying)の4倍の情報が伝送できる。 元の記事へ
本件に関する問合せ先
国立研究開発法人情報通信研究機構
ネットワーク研究所
フォトニックICT研究センター
フォトニックネットワーク研究室
古川 英昭
ml.nict.go.jp広報(取材受付)
国立研究開発法人情報通信研究機構
広報部 報道室
nict.go.jp