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寳迫 巌(ほうさこ いわお)ワイヤレスネットワーク総合研究センター総合研究センター長大学院博士課程修了後、日本鋼管株式会社(現JFE)を経て1996年に郵政省通信総合研究所(現NICT)入所、テラヘルツ帯の半導体デバイス、カメラ、無線システムの研究開発に従事。博士(理学)。サイバー空間と実空間の融合~Beyond 5G / 6G動体通信システムの進化は著しいものがあります。さらに移動体通信システムを支えるコアネットワークやネットワーク上に存在するサーバー群、それらが織りなすサイバー空間を通じての人と人、人とモノ、モノとモノといった相互作用が、社会生活の様々な局面において大きな意味を持つに至っています。5Gが社会実装されつつある現在、研究開発ではBeyond 5G / 6Gに焦点が当てられつつあります。これからますます重要性を増すサイバー空間を通じての相互作用をサイバー空間と実空間の融合としてとらえ、Beyond 5G / 6Gの研究開発との関係を示します。■背景COVID-19による新型感染症の蔓まん延えんにより、政府から緊急事態宣言が4月7日に発出、4月16日には全国に拡大され、5月14日に解除されました。この間やその後も多くの人が、いわゆる三密を避けるため外出を控えた生活を行っています。在宅での勤務や授業などのテレワークが推奨され、多くの方々が実践してきました。感染症対策においても、またテレワークにおいても、ICT(情報通信技術)がいかに重要であるかという点に気が付きました。その一方で現在のICTの技術水準や普及の程度は、感染症対策やその結果として推奨されている「新常態」での生活に対し、必ずしも十分でないことも認識されました。この認識に立って、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が7月17日に閣議決定され、感染症対策や新常態での生活様式におけるデジタル化の推進がうたわれています。サイバー空間と実空間の融合:Cyber-Physical System緊急事態宣言時における在宅勤務等を通じて明らかになったことの一つに以下の点があります。それは、在宅勤務・授業や三密回避のため、空間的に分散した個人がICTを駆使して他の個人やロボット/アバターと協働し、いかなる時でも価値を創出し続けることができるようにすることが、現状では甚だ不十分だったので、できるだけ早くそれらが可能な状態にしておくということです。ICTを駆使するとは、即ち、インターネットやそれを構成するサーバー群(クラウド)で形成されるサイバー空間を利用することにほかなりません。さらに感染状況に限らず、実空間で起きている事象(ビッグデータ)を計測しサイバー空間に投影して、解決策(最適解)を見いだす仕組みの実現も、社会課題を解決してより良い社会を実現するために必要と考えられます。■Beyond 5Gの位置付け移動体通信システムは、通信基盤(1G~3G)、生活基盤(4G)と進化し、個々人の生活に欠くべからざる要素となってきました。5GにおいてはIoT等のように人だけではなくモノも繋つながる社会基盤となってきており、その利活用はDX化の推進と相まって加速度的に進展していくと考えられています。Beyond 5G / 6Gにおいては、サイバー空間と融合し「Society 5.0」の神経網ともいうべきものになっていくと考えられます。移コロナ禍に生かすNICTの研究・SEEDsHow NICT R&D Can Underpin COVID-19 Aected SocietyNICT NEWS 2020 No.68

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