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■今後の取組と展望──アフターコロナ社会への取組は?徳田 NICTは基礎研究も多いのですが、基礎研究の段階から外部の企業などと連携して開発を進めていくことが大切です。そして、実証実験が終わり実用化のめどがたったら企業やベンチャーに引き渡して製品化・商品化してもらう。 従来の研究開発の進め方が、技術の完成まで一直線に進むリニア型だとすると、これからは早期に外部と連携して開発を進めるノンリニア型の技術開発を目指したい。これが、社会実装を早めるための近道ではないかと思います。 個々の研究者は基礎研究をやりつつも、将来、技術が社会で使われるようになったときの具体的なイメージについても考えてほしいと思います。少なくとも20年30年は先を見てほしい。──技術の未来像を実現するための課題はどう解決していけばいいのでしょうか。徳田 社会的課題の解決のための倫理・法制が重要になってきます。2021年度から始まる第6期科学技術基本計画では、科学技術イノベーションには人文科学の研究も必要であると変更されています。例えば、人間の脳の仕組みを模倣したAIの普及を意識したケースなど、どこまでが人間の仕事でどこからが機械の仕事かを考える必要が出てきました。この問題は自然科学系の科学者も考えるべきですが、哲学や倫理学の専門家の意見や研究成果も必要となっています。 最近、「説明できるAI(eXplainable AI、XAI)というものが、米国防総省の高等研究計画局(DARPA)で提案され、世界中の多くの研究所や企業で研究されています。AI、特に深層学習は「答えは正解だがなぜこの答えを出したか分からない」とよく言われます。これを自ら説明できるようなAIをつくろうという試みです。こういった形にテクノロジーがシェーピングされ、成熟化していかないと、不具合な答えが出たときに解決できないという問題が出てきます。──NICTがこれから成すべきことは何でしょうか。徳田 結局は人材に行き着くと思います。優秀な研究者、さらには、彼らと企業など一般社会との接点となるビジネスコーディネータやプロジェクトコーディネータのような人も増やしていきたいと思います。基礎・基盤研究をきっちり押さえながらも、長中期的視野を持ち、必ずいつか役に立ち、社会的インパクトの高い技術を、スピード感を持って社会に実装していきたいと思います。3NICT NEWS 2020 No.6

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