図1 B5G/6Gホワイトペーパーに登場するアプリケーションイメージの⼀例*1:空を舞台に物通と交通、⼈の往来がスマートに管制されている。そこでは、インシデントや事故を避けるため、多重の安全システムを必須とする。図2 ドローンサイネージからネットワークを活⽤した無⼈⼯場、⼤規模港湾管理への展開(a)(b)図3 開発中の原⼦時計⽤発振回路(写真上部は、比較対照用の黒ゴマ)が十分に向上したなら、自動車やドローンなどの機器類は、IPアドレスが割り振られた一種の端末として機能させればよいのでしょうか? ノイマンボトルネックという言葉があります。これは、コンピュータにおいて記憶装置と演算装置との間の情報伝達が、チップの演算速度を制限してしまうというものです。原典によれば*7、より広義に、システム設計において記憶系と実効系の間の情報交換の効率化に十分な配慮とコストが必要とされることを示唆するものです。クラウドネットワークを記憶系、制御される機器類を実効系と分類すると、これらの間の情報伝達の効率化が開発のポイント(ボトルネック)となります。そして、実効系である機器類は人間よりはるかにダイナミックに動作し、郊外や僻へき地ち、海や空へと広範に配備されることになります。そのため、機器類にはIPアドレスに加え、正確な位置情報と時刻情報とをリアルタイムに付与し、接続機器をより正確に同定・把握ができるようにする必要があります。もちろんGNSSより正確に、電波環境に影響を受けない安定性を確保してです。NICTでは最も安定したクロック装置の一つである原子時計をチップ化する技術開発を進めており(図3)、これを機器類に搭載することができれば、センサと組み合わせて、スタンドアローンでの位置同定・時刻同定が可能となります。さらに、近接するデバイス間での無線通信による時刻合わせやポジショニング、複数のデバイス間での絶対時刻推定のアルゴリズムの開発など、多くの研究が進捗しており、上記の位置・時刻情報による機器類へのID強化に大きな貢献が期待されます。これらの開発領域は、高い技術集約を必要とし、プラットフォーマのクラウド技術と相互補完して、我が国が競争力を発揮すべき領域と考えます。■おわりに最初に触れたSFコミックでは、理想的な社会システムのなかで、理想的でない人間が葛藤する様が描かれます。しかし、今日、理想的な人間像は画一的なものではなく、「多様な個性を許容する」ゆらぎを持ったものへと変化し、我々のホワイトペーパー*1でも、人間の生活の多様性を、通信技術をベースとした社会システムがフォローし、スマート化していく様子が描かれます。未来はかつてのSFよりも穏やかに、しかし確実に進展していきます。【参考文献】*1 情報通信研究機構編, “Beyond 5G/6G White paper ,” 2021.*2 士郎正宗, “ Appleseed,” 青心社, 1985.*3 https://www.youtube.com/watch?v=GrOBF27_Vu4*4 NTT技術ジャーナル,vol.32, no.1, 2020.*5 Carl Ramey, “Silicon Photonics for Artificial Intelligence Acceleration,” IEEE Hot chips 32, 2020.*6 Frank Arute et. al. “Quantum Supremacy using a Programable Superconducting Processor,” Nature, vol.574, pp.505–515 ,2019.*7 John Backs, “Can Programming be Liberated from the von Neumann Style? A Functional Style and Its Algebra of Programs,”Communication of the ACM, vol.21,no.8, pp.613–641, 1978.9NICT NEWS 2021 No.6
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