Beyond 5Gにおける超拡張性を目指すワイヤレスネットワーク技術の将来展望豊嶋 守生(とよしま もりお)ネットワーク研究所ワイヤレスネットワーク研究センター 研究センター長1994年郵政省通信総合研究所(現NICT)入所。ETS-IVによる光衛星通信実験に従事し、その後NASDA(現JAXA)出向、ウイーン工科大学在外研究を経て、OICETS、SOTA、ETS-9等の衛星搭載通信機器の研究開発に従事。博士(工学)。eyond 5Gや6Gにおける情報通信技術の議論が加速しており、通信ネットワークをグローバルに拡張し、地上と宇宙をシームレスにつなぐ高度な情報通信ネットワークの実現が期待されている。5Gでは、高速大容量、超高信頼低遅延、超大量端末という3つの特徴があるが、Beyond 5Gや6Gの時代には、超拡張性を目指して非地上系ネットワークと呼ばれる移動体とのワイヤレス通信を高度化することが重要になる。■背景近年、世界的に通信衛星のデジタル化、衛星コンステレーションにおける多数の小型衛星の打上げ等、衛星通信が高度化・活発化してきている。地上においては2020年に第5世代移動通信システム(5G)が本格的に導入され、いわゆるBeyond 5Gや第6世代移動通信システム(6G)に向けた研究開発も世界各国で開始されている。地上系の5Gにおける高速大容量のeMBB(enhanced Mobile BroadBand)の要求条件を達成するため、従来の6 GHz以上の高い周波数帯の拡張が検討され、28 GHz帯等のKa帯やミリ波帯の周波数割当が新たに行われている。移動体向けの非地上系ネットワーク(NTN: Non-Terrestrial Networks)への高速・大容量化では、高高度プラットフォーム局(HAPS)や移動体向けブロードバンド衛星通信システム(ESIM)に、ミリ波やKa帯の周波数が割り当てられている。近い将来、何万機も上空に衛星や無人航空機が飛び交い、10~100 Gbps級の通信速度が移動体でも当たり前になると、無線周波数と広い通信帯域の確保が課題となる。光空間・光衛星通信技術を用いると搬送波周波数が高く帯域幅にほぼ制限がなく、干渉に強く、小型・軽量化に適した特徴を有し、NTNにおける通信へ革新的な飛躍をもたらす手段であると期待されている。■光空間・光衛星通信技術の非地上系ネットワークへの展開近年、キューブサット級の超小型衛星で世界初の光通信の軌道上実証が成功し、このクラスの衛星で光通信の実現可能性が示され、衛星通信分野において革新的な変化が起きつつある。衛星コンステレーションでは、米国Space-XのStarlink計画で、既に低軌道(LEO)に千機以上の衛星を打ち上げており、将来的には1万機以上の衛星を軌道投入し、地球規模で最大1 Gbpsのインターネット接続を提供する予定である。図1に、光空間・光衛星通信技術を用いた主な利用アプリケーション例を示す。Beyond 5G / 6G時代におけるNTNへの光通信技術の応用については様々な形態が考えられるが、ドローンやHAPSを用いた地上における光空間通信や、キューブサットなどの超小型衛星を用いた光通信の利用、衛星コンステレーションにおける光通信の基幹通信網への応用、そして深宇宙通信への基幹網の構築などが挙げられる。B図1 光空間・光衛星通信技術を用いた主な利用アプリケーション例FEATUREBeyond 5G / 6Gホワイトペーパー特集White Paper on Beyond 5G and 6GNICT NEWS 2021 No.610
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