情報通信研究機構(NICT)では、様々なNTNへの適用を目指し、超小型光通信機器の研究開発を実施している。図2にHAPS用光通信機器の試作モデルの外観と、LEOキューブサット搭載用光通信機器(CubeSOTA)のシナリオの概要を示す。HAPSの搭載環境としては、ペイロードの搭載リソースが制限される上、高度約20 kmでのサービスが想定されるため、動作環境も厳しく通信機器の設計に配慮が必要である。また、CubeSOTAの研究開発では、6U(1Uは10 cm角の大きさ)のLEO–静止軌道(GEO)間で2 Gbps級、3UのLEO–光地上局(OGS)間で10 Gbps級の光通信の宇宙実証を目指している。NICTのBeyond 5G研究開発促進事業においては、小型衛星コンステレーションに向けた衛星搭載光通信技術の研究開発が推進されており、日本における研究開発の加速が期待される。■月までつながる2030年代のBeyond 5G技術深宇宙への開発では、アメリカ航空宇宙局(NASA)が中心となり、月への有人宇宙探査を長期目標として産業界連携及び国際協力等により月周回有人拠点(Gateway)の構築を本格化するアルテミス計画が推進されている。月近傍における通信において、1 Gbpsクラスの光通信インフラを構築することが検討されている。NICTでは、Beyond 5G / 6G技術の進展により、実現が想定される社会像・ユースケースや、そのために必要な要素技術・研究開発ロードマップ等をまとめたホワイトペーパーを作成し、2021年4月1日に公表した。その中で、月面都市を想定し、その利用シーンから必要なユースケースを考え、そのために必要な要素技術を検討している(図3)。2035年頃には月面都市の開発が開始され、日本の強みであるロボット技術を活いかし多くのアバターが月面で活躍し、それらをGatewayや地球から人がコントロールしていると考えられる。その時代には、地球と月の間を結ぶ高速・大容量な光通信技術が必須であり、将来に向けての通信技術の研究開発が不可欠である。■Beyond 5G / 6G時代の3次元のシームレスなネットワークの社会2030年代の社会においては、静止衛星、非静止衛星、HAPS、航空機、ドローン、船舶、そして地上系端末など、様々な種類の要素がシームレスに、多層的に接続される3次元のネットワークが構築されると考えられる。無数に飛ひ翔しょうする移動体間では周波数逼ひっ迫ぱくの課題があり、通信リンクは、電波回線はもちろんのこと、光通信やテラヘルツ通信が用いられると考えられる。この様な多層ネットワークを実現するためには、これらの要素を統合的に管理するネットワーク制御基盤を構築する必要がある。図4にBeyond 5G / 6G時代に想定される超スマート社会の将来像を示す。NTN技術が主流になり、3次元ネットワークのアプリケーションとして従来のブロードバンド通信だけではなく、宇宙利用の特徴を活かした月面基地への展開や、世界規模の衛星IoTによる災害監視、自律航行船や自動物流等が実用化されていくと考えられる。2030年代には、超高速ワイヤレス通信で達成されるXR(X-Reality)技術を用いて、コロナ禍での未来のテレワークや遠隔医療が実現され、超臨場感のオンラインゲーム、アバターによるショッピング、遠隔教育、自動運転でのスカイカー等が本格的に導入され、安心・安全に人と人がシームレスにつながるセキュアな超スマート社会の実現が期待される。図3 NICTのホワイトペーパーにおける月面都市のユースケース図4 Beyond 5G / 6G時代における超スマート社会の将来像図2 HAPS搭載用の光通信機器の試作モデル(a)とキューブサット光通信シナリオの概要(b、c)(a)(b)(c)11NICT NEWS 2021 No.6
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