Beyond 5G / 6Gホワイトペーパーの作成は、NICT職員の総力を挙げての活動でした。ここでは、その裏側を少しご紹介したいと思います。Beyond 5G / 6Gに向けた議論の始まりNICTが一体としてBeyond 5G / 6Gの議論を本格化したのは、2019年7月でした。NICTには、トピックを決めて、組織を横断した職員が集まり、幹部も交えて議論を行うサロンというイベントがあります。サロンでは、「思い」を持つ方がプレゼンテーションして質疑応答をし、その後にテーブル単位でより率直な意見を披露するというのが主流の進め方でした。プレゼンテーションを入念に準備される場合や、簡易な資料だけで考えを説明される場合もあり、形態は様々です。新型コロナウイルスの影響が出る以前には、夕方から夜にかけて直接会議室に集まり、普段は出会えない方と思いがけず話ができるのも楽しみでした。2019年7月のサロンでは、初めて6Gをトピックとして扱いました。Beyond 5Gや6Gに利用可能な要素技術の研究開発は、NICTのそれぞれの研究者が着実に進めていますが、同じビジョンを共有して相乗効果が得られる活動を意識し始めたのは、このサロンがトリガになったのではないでしょうか。それから2020年秋までに合計6回の6Gサロン(ワーキング議論を含む)を開催し、200人近い参加者による熱い議論が繰り広げられました。その雰囲気を引き継ぎ、2021年3月を目標にホワイトペーパーを作成することになりました。ホワイトペーパー作成の舞台裏ホワイトペーパーは、技術的な内容だけではなくビジョンを含む考え方を伝えるものです。そのような内容をNICT全体から集まった有志が執筆して公表することは、おそらく初めての試みではないでしょうか。担当部署があるわけではありませんから、当時私自身が所属していた経営企画部のメンバーが中心となって議論の活性化や文章の取りまとめをお手伝いしました。執筆者には、研究者以外も含めて分野や役職にかかわらず集まっており、幹部自らが内容に手を入れた部分もあります。内容については、いくつものグループに分かれて熱い議論が行われました。例えば、B5G時代の未来像を物語形式で記載した3章は、今回のホワイトペーパーの大きな特徴の一つですが、3つのシナリオを担当する各チームが何度もウェブ会議を繰り返しています。このように大変に思Beyond 5G / 6Gホワイトペーパー作成の裏話Beyond5G研究開発推進ユニットBeyond5Gデザインイニシアティブ イニシアティブ長 石津 健太郎図 6Gサロン(ウェブ会議)の運営側の一幕いがこもった文章をホワイトペーパーとして取りまとめることには難しい点がありました。整合性を取るあまりに「思い」が表れた文章を切り取ることは本意ではなく、濃淡のある文章が残っている可能性はあります。このような状況を鑑みてご容赦いただければと思います。公開を2021年3月に控えて、2か月前にはBeyond 5G分野で活躍されている有識者を国内外からお呼びしてNICTオープンサミットと呼ぶイベントを2日間にわたり開催しました。そこでは執筆中のホワイトペーパーをご紹介し、最終とりまとめに向けて忌き憚たんのない意見を頂いて、進むべき方向性について議論することができました。英語版に新たな試みを公開後のホワイトペーパーの改訂などは、2021年4月からは新設されたBeyond5G研究開発推進ユニットが行うことになり、まずは4月末を目標に英語版の作成に取り掛かりました。翻訳に当たっては、NICT先進的音声翻訳研究開発推進センター(ASTREC)の研究成果を活用した機械翻訳システムTexTraを利用しています。物語的な文章などは直接翻訳が難しい場合もあるため人間が部分的に修正しましたが、この方法により短期間の約1か月で英語版を公開することができました。https://beyond5g.nict.go.jp/download/(Beyond5G研究開発推進ユニットの資料ダウンロードページ)NICT NEWS 2021 No.612
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