情報指向ネットワーク技術を応用して未来のネットワークを実現松園 和久(まつぞの かずひさ)ネットワーク研究所ネットワークアーキテクチャ研究室研究員博士(政策・メディア)研究者になってよかったことは? 否いや応おうなしに世界が相手となるので、チャレンジングな仕事ができると同時に様々なことを学べる点です。今までで最大の失敗は?高校3年生の時、最後の重要なバスケットボールの試合で、開始10分で初めて4ファールしてしまったことです。今でもたまに夢に見ます。最近はまっていること筋トレにはまっており、腹筋ローラーを使って重点的に腹筋を鍛えています。ビヨンドシックスパック(B6P)を目指して日々頑張っています。QAQAQA●経歴1982年長崎県にて誕生2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業2013年慶應義塾大学政策・メディア研究科博士課程終了2013年フランス国立情報学自動制御研究所 (INRIA) 博士研究員を経て、NICT入所2021年現職●受賞歴等平成29年度NICT成績優秀表彰優秀賞(個人)令和3年度 NICT成績優秀表彰優秀賞(団体)B一問一答File 18eyond 5G時代には、これまで以上に超高速・超低遅延なアプリケーションや超大容量のコンテンツ配信など、多種多様なネットワークサービスが出現します。そこで私達が着目したのは、現在のインターネット通信の様々な課題を克服する「情報指向ネットワーク技術(ICN)」と呼ばれる新しい通信技術です。現在私は、ICNとネットワーク内符号化を連携させた通信品質向上技術や、ICNとエッジコンピューティングを融合させたネットワーク基盤技術の研究を行っており、ICNを実社会へ展開するため、Ceforeと呼ばれるオープンソースソフトウェアの開発や、国際標準化団体であるIETF/IRTFでの標準化活動も行っています。今年度より、ICNの新たな応用先として、量子鍵配送ネットワーク(QKDN)への適用を検討しています。今後、様々な重要情報がネットワークを介してやり取りされるため、最も強力な秘匿性を担保するQKDNはとても重要な技術です。しかし、QKDNが提供可能な限られた暗号鍵を効率良く使用し、ユーザーやアプリケーションからの暗号鍵要求が棄却される事態を回避するための技術が必要となります。そこで、ICN特有の経路制御方式及びネットワーク内キャッシュを利用し、従来の通信よりも暗号鍵の利用効率を向上させることを提案し、その課題解決に貢献することを模擬検証しました。この基本コンセプトとアプローチはIEEE GLOBECOM2021にて発表予定となっており、世界に先駆けて本技術を提唱することになっています。今後は、ICNとQKDNが融合したネットワークの概念実装を進めるとともに、関連するコア技術の標準化活動にも取り組み、未来のネットワークアーキテクチャの実現を目指していきます。図 従来型通信と比較したICN型通信による鍵の有効利用13NICT NEWS 2021 No.6
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