構想されたという形になるかと思います。――Beyond5G研究開発推進ユニットの組織としての構成は、どのようになっているのでしょうか。寳迫 Beyond5G研究開発推進ユニットの下には総合企画室と、大きな組織としてテラヘルツ研究センターがあります。テラヘルツ研究センターがBeyond5G研究開発推進ユニット下に置かれている意味は、将来的な移動体通信の世界においては、非常に高い周波数帯を使う可能性が高いためです。 その一方で、研究センターの外にユニット直下の組織として、先ほど述べた「Beyond 5Gに向けての司令塔」的役割を専門に担うBeyond5Gデザインイニシアティブが置かれています。 これらとは別にプロジェクトというものもあり、現在はそのひとつとして、総務省「仮想空間における電波模擬システム技術の高度化」事業の委託を受け、電波エミュレータの研究開発を行っています。電波エミュレータとは、大規模複雑化する電波システムを仮想空間においてリアルタイムに模擬するものです。特にBeyond 5Gの世界では電波を縦横無尽に使う必要があり、そのためにも、大規模な電波システムの検証は非常に重要で、それが、このプロジェクトが我々のユニット下に置かれている理由です。また、NICTの中の様々な研究所の人が関わる横串的なものであることも、もう一つの理由と言えるかもしれません。石津 Beyond 5Gを進めていく核としてユニットは設立されましたが、そのなかで、Beyond 5Gに欠かせない要素技術の研究開発を実際に進めていく部隊としてテラヘルツ研究センターがあり、一方で、機構の中を俯ふ瞰かんして横軸でつなぎながら、機構が一体として外部とも連携していくための戦略を立案し実行するのがBeyond5Gデザインイニシアティブという位置付けと考えてもらえばと思います。■多くの人とビジョンを共有するホワイトペーパー――そうしたなかで、この春に公開された「Beyond 5G / 6G White Paper(1.0版)」が持つ意味について、教えていただけますか。寳迫 Beyond 5Gには様々なステークホルダーが関わってきますが、そうした方々と様々なディスカッションを進めていくためのマテリアルとして、ホワイトペーパーをうまく活用していくことが重要だと考えています。 NICTの中でも更に議論を進め、内容を随時更新していくことはもちろん、ディスカッションを行う相手は国内に限ったことではありませんから、日本語版に加え、英語版の制作も行っています。 英語版に関しては、日本語版をリリースして約1か月後、4月30日に0.9版を公開しています。「0.9版」となっている意味は、通常、こうした英文のドキュメントは英文校閲を経て出すのですが、これについては、「できるだけ早く出したい」ということもあり、NICTの技術をPRする意味も兼ねて、先進的音声翻訳研究開発推進センターが開発した「TexTra(テキストラ)」という自動翻訳システムを使って制作しているためです。世界各地、様々な機関からホワイトペーパーは次々に出てきますから、時間を掛けて完璧な英語版を出すよりも、まずは早く出して読んでもらおう、ということですね。――実際に、ホワイトペーパーの反響はいかがでしょうか。石津 ダウンロード件数も数千件単位まで伸びていますが、直接多くのご意見もいただいています。 このホワイトペーパーでは、第3章で「Beyond 5G / 6G時代はどんな世界に?」と題して、2035年あたりを想定した未来社会のイメージを描いていますが、特にこの部分は一般の方が読んでも理解しやすいよう、あえて研究要素は除いたストーリー仕立てになっています。これについて、「何を目指しているのかがわかりやすい」と褒めていただくことが多いですね。 一般の方はもちろん、研究者であっても、こうした物語のほうがイメージしやすいかもしれません。Beyond 5Gというのはモバイル通信に限った話ではなく、新しい世界の基盤になる考え方であって、どんどん新しい分野の人を呼び込まなくてはいけません。そういう意味では「通信技術の世界の言葉がわかる人」だけが読めるものでは意味がなく、むしろ全然違う分野の人が読んで興味を覚え、自分たちもそこに加わることで面白いことが起きそうだと思ってもらえるものでなくてはいけません。 実際には、当初からそこまで計算したわけではないのですが、結果的には、こうした構成にしたことは成功だったと思っています。寳迫 実はこれまで、NICTにおいては「Beyond 5Gの社会」を見据え布石を打つFEATUREBeyond 5G / 6Gホワイトペーパー特集White Paper on Beyond 5G and 6GNICT NEWS 2021 No.62
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