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個々の研究所がホワイトペーパーを出した例はあるのですが、NICT全体として出したものとしては、このBeyond 5G / 6Gと、同時に出された量子ネットワークに関するものの二つが、おそらく初めてのものです。 そんな最初のチャレンジではありましたが、時期的にもそこそこ早く、内容的にも先述のように特徴があり、ほかにも多々ホワイトペーパーが出てくるなかで、埋没しない形で出せたのはよかったと思っています。広く興味を持ってもらい、国際的な講演などに呼んでいただく機会もあり、スタートとしては上々でした。今後はこれをよりよく活いかし、更に議論を進めていくきっかけになればと思っています。■Beyond 5Gに存在感を示していくために――今後の活動、展望などについてお聞かせいただければと思います。寳迫 2030年代後半にはBeyond 5G、なかでも6Gの社会実装が始まっていくのだと思いますが、その中に日本の技術がどう入っていくか、そしてそこにNICTがどれだけ貢献できているか。そこが、我々の活動の成果を測る尺度になると思っています。 もちろん、ホワイトペーパーばかり一所懸命繰り返し出していても仕方なくて(笑)、どうやって現実の動きに関わっていくか考える必要があります。 民間企業の場合は、ちゃんとビジネスとして行っていて、研究成果を自分たちのネットワークに反映していくことができます。一方、我々は国の研究機関なので、アウトプットとしてプロダクトもサービスも作りませんから、その点で成果の反映には難しさがあります。そこで我々の成果を実際の社会に活かしていくことを考えると、やはり標準化というのが大きなポイントとなってきます。 これは今後のタイムスケジュールとしてもわかりやすい例ですが、標準化のステップとしては、国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R)のなかで、どういう周波数帯が使えるかといったディスカッションは始まっていて、これには我々も参加しています。2023年にはITU-Rがビジョン勧告というものを出すのですが、ここにどれだけ意見を反映させることができるかが、ひとつの勝負どころになります。 さらにはそのビジョン勧告を受け、世界共通の移動通信システムの標準化団体である3GPPにおいて、実際の携帯電話のシステムとして成立させるために必要な事項が、各組織の合意をとって進められていきます。そうしたなかに、NICTとして考えた概念が実装されていくとよいなと思っています。――本日はどうもありがとうございました。図1 2035年頃の未来像をイメージし、バックキャストしてB5Gの技術課題を洗い出す図2 Beyond5G研究開発推進ユニットのロゴ異分野のテクノロジーやビジネスなど『様々な側面』からアイデアを出し合い、皆で創り上げた箱の中にはワクワクする未来が詰まっているという、Beyond 5G研究開発の特徴を示している。NICTロゴの青を基調とし、NICTの英知を最大限活用していくという情熱を込めた。3NICT NEWS 2021 No.6

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