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Beyond 5Gの考え方とそれを実現するオープンなシステム構成フィジカル空間とサイバー空間が一体となる世界観とは?石津 健太郎(いしづ けんたろう)Beyond5G研究開発推進ユニットBeyond5Gデザインイニシアティブイニシアティブ長大学院博士後期課程修了後、2005年に情報通信研究機構 入所。コグニティブ無線、ホワイトスペース通信、ローカル5G等の自営無線システム等の研究開発に従事。国際規格の標準化活動や国際的な実証試験に取り組む。現在は、Beyond 5G研究開発の戦略立案や情報発信を主導。電子情報通信学会スマート無線研究専門委員会 副委員長。博士(情報科学)。BFEATUREBeyond 5G / 6Gホワイトペーパー特集White Paper on Beyond 5G and 6Geyond 5Gは、現実世界(フィジカル空間)において情報通信システムの高度化や多様化を行うことに加えて、仮想世界(サイバー空間)における情報の学習や分析が組み合わさることによって、従来の技術では限界と考えられていたことを実現する社会の根幹的なインフラとなるでしょう。それはどのような世界なのか、そしてそれを実現するシステムはどういう構成なのか、一緒に考えてみましょう。■社会インフラ形態の変化と通信システムの在り方社会活動を支える様々なインフラやリソースは、集中から分散へ、独占から共用・共有(シェアリング)へと、その利用形態が大きく変化しつつあります。いわゆる共有経済(シェアリングエコノミー)と言われるもので、交通機関におけるカーシェアリング、労働環境におけるコワーキング、金融におけるクラウドファンディングなどがその具体例でしょう。この流れは通信環境についても例外ではありません。ハードウェアのホワイトボックス化やソフトウェアのオープンソース化、拡張性の高い仮想マシン構築技術の出現により、いわゆるSDN(Software-Dened Networking)やNFV(Network Function Virtualization)の利用が促進され、ネットワーク資源をより細かい単位で共有できることが期待できます。モバイル無線システムについても、3GPPで策定されたアーキテクチャでは機能構成が見直され、複数の運用者による基地局やその制御装置(無線アクセスネットワーク)の共用が容易になりつつあります。人工衛星を活用した非地上系ネットワーク(NTN: Non Terrestrial Network)や成層圏を飛行する高高度基盤ステーション(HAPS: High Altitude Platform Station)のように新たな特徴を持つシステムも、物理的には限られたリソースですが、多くの利用者に共用されてEnd-to-Endの通信の一部を担っていくでしょう。周波数についても、場所や時間帯に応じて優先度をつけて他のシステムと融通できるダイナミック周波数共用の制度検討も進んでおり、高度なリソース共用といえます。このようにインフラやリソースが適切な単位で共用・共有できれば、適材適所で組み合わせることにより、革新的なサービスや異分野技術と連携したサービスの創成が加速します。これを可能にするためには、オープンなアーキテクチャによりシステムが定義されていること、サービス要求に応じて一貫したポリシーで機能組み立てを指示する機能(オーケストレータ)が提供されていること、それを運用できる制度が確立していること、が必要になります。■サイバー/フィジカル空間の融合とはBeyond 5G時代には、大量で多様な情報を収集・学習・分析して、社会活動を最適化することが求められます。この情報には、自動車やドローンの位置や速度、街中の人流、気象など、通信環境以外のあらゆる情報が含まれます。そして、これまでモバイル通信では積極的なリソース管理の対象とされてこなかった時間や空間までも一体として扱い、サービスの最適化を行います。一例としてドローンによる配送を挙げますと、上空の混雑状NICT NEWS 2021 No.64

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