HTML5 Webook
8/16

FEATUREBeyond 5G / 6Gホワイトペーパー特集White Paper on Beyond 5G and 6GBeyond 5G / 6G時代のサイバネティック・アバター社会の実現に向けて空間・時間・身体の制約を超えたコミュニケーションへの挑戦安藤 広志(あんどう ひろし)ユニバーサルコミュニケーション研究所先進的リアリティ技術総合研究室上席研究員Ph.D.(計算神経科学)を取得後、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)に入所、主任研究員・研究室長を経て、2006年よりNICTの超臨場感プロジェクトに参画。多感覚・評価研究室室長、脳機能解析研究室副室長を経て現職。認知脳科学、計算神経科学、多感覚情報処理、超臨場感技術の研究に従事。世代の情報通信技術Beyond 5G / 6Gの活用によりサイバネティック・アバター社会の実現が期待されています。このような社会では、人々は自分自身のアバターを高度に利用して、空間・時間・身体の制約を超えた多様な活動が可能になると考えられます。本稿では、サイバネティック・アバター社会が生み出す新たな生活スタイルや社会的価値とともに、その実現に必要となる技術の研究開発や今後の取組について紹介します。■サイバネティック・アバター社会とは何かサイバネティック・アバターは、自在に制御できる自分自身のリアルな3D映像や分身ロボットを意味しています。次世代のBeyond 5G / 6Gネットワークが普及すれば、このようなアバターを高度に活用することで、自分自身をまさにどこにでも「瞬間移動」させて、遠隔からでも実空間と同等の活動が可能になると期待されています。すなわち、サイバネティック・アバター社会とは、人々が空間・時間・身体の制約を超えて多様なつながりを作り出し、一人ひとりの活動領域が飛躍的に広がる未来の社会と言ってよいでしょう。NICTが発表したBeyond 5G / 6Gホワイトペーパーでは、このような技術の普及が想定される2035年の人々の生活スタイルを具体的にイメージするために、とある企業の技術開発課長の一日を日記風に描いています(図1)。彼はアバターを活用して、一日のなかで、感触を含む五感の遠隔会議、海外のロボットの遠隔作業、高齢の親の遠隔介助、複数アバターの同時活用、XRの遠隔登山、海外とのビジネス交渉などを次々と行っていきます。このシナリオでは、アバターを駆使することで、誰もが一人で何役も楽々とこなせるマルチ人間になれる可能性が示されています。■新たな社会的価値の創出 このようなアバター技術はどのような社会的価値を新たに生み出すのでしょうか。その一つは、レジリエントな社会の実現です。コロナ禍のような感染症拡大が生じると非接触の活動が求められます。また震災などの自然災害が生じると人々の移動に制約が生じます。このような予期できない事態が生じても、平時の活動と同等の活動がCyber空間を通じて維持できれば、経済的・社会的ダメージを最小限に食い止められる頑健な社会が構築できると考えられます。 もう一つは、労働生産性の飛躍的向上次図1 サイバネティック・アバター社会の生活スタイル(2035年:とある企業の技術開発課長の日記から)NICT NEWS 2021 No.66

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る